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院内誌「明るい窓」に掲載されました。

院内プロフェッショナル紹介 〜ブレストセンター編〜


中村 清吾先生

ブレストセンターの紹介および今後の展望

乳癌の診療は、新規薬剤の開発や治療技術の急速な進歩に伴い、図1の如く、医師の分野でも専門分化に応じたチーム医療が必要となっています。また、1000人検診して、50人に異常が見つかり、園中から3人のがんが見つかるという図式の中で、「検診・診断」を中心に診療を行う施設、「診断・初期治療」を行う施設、「再発の治療・緩和ケア」を行う施設など、機能を明確化した施設間の連携も重要な課題です。我々が目指すブレストセンター構想を図2に示します。

<図2>





津川 浩一郎先生

センチネルリンパ節生検の現状と今後特に病理検査から半自動化された遺伝子検査(OSNA法)への移行

乳癌では約3割程度の患者さんに腋の下のリンパ節(腋窩リンパ節)に転移が認められます。従来は乳癌の手術時一律に腋窩リンパ節を根こそぎ切除する手術(腋窩リンパ節郭清)が行われていました。現在では、センチネルリンパ節生検という手法を使ってまず転移の有無を確認し、それによって郭清するか否かを決めています。センチネルリンパ節とは癌原発巣から直接リンパ流を受けるリンパ節で、最初に転移がおこるリンパ節といえます。RI、色素などのトレーサーを腫瘍近傍に注入してリンパの流れを確認しセンチネルリンパ節を見つけ、摘出生検します。転移診断には病理組織検査が用いられますが、多数の切片を作成する労力や割面に表れた転移のみしか確認できないなどの問題点があります。そこで、リンパ節転移のより正確な診断方法として遺伝子検査(OSNA法)が開発され、注目を集めています。当院でも臨床試験が行われ、術中診断への応用が始まります。リンパ節全体を溶液化し、癌細胞が持つ遺伝子を増幅させてオートメーション化された機械によってリンパ節転移の診断を行います。小さな転移も含め短時間で(30分程度)診断結果を得ることが可能です。正確な診断を行うことで、腋窩リンパ節郭清や必要な薬物療法の適応決定に大いに貢献することが期待されます。




矢形 寛先生

マンモトーム生検やMRIと超音波画像の
合成下に行う新たな生検法

私の方からは2つの技術を紹介させていただきます。乳がんの中には時に非常に診断の難しいものに遭遇します。そのような場合に私たちはマンモトーム生検を行っています。マンモトームの針は内筒と外筒からなり、内筒が回転しながら組織を削り取り、吸引装置によって体外へ排出します。マンモトーム生検により一度に確実に十分量組織採取することができるようになり。早期微小病変の診断が飛躍的に向上しました。乳がんの手術においては乳房温存療法が普及しています。がんを確実に取り除きつつ、乳房の形態を保つ必要があり,がんの拡がり診断が重要となってきます.もっとも感度が高い方法はMRIであり,簡便で低侵襲なのが超音波検査です。最新の超音波装置では両画像を同期させながらリアルタイムにがんの拡がりを確認することが可能となりました。これにより切除範囲をより正確に判定でき、過不足のない手術が可能となると考え現在研究中を進めています。




角田 博子先生

MRI下生検を含む乳がん画像診断の現
状と今後の展開

乳房の診断は、かつては触診が中心に行われてきました。しかし、近年マンモグラフィ、超音波検査、MRIなどの多岐にわたる画像診断が発展し、触知できない病変を含めてその診断の中心をなすようになりました。当放射線科では、これらの画像診断の発展に遅れることなく、最新のかたちで対応しています。外科医との連携も重要で、お互いに情報を交換しながら、放射線科の専門性を活かして診療にあたっています。基本となるマンモグラフィはアナログから現在では完全デジタル化され、モニタ診断となりました。超音波検査では基本となるBモード画像(超音波の反射を利用した白黒画像)に加え、血流情報や硬さを評価するエラストグラフィなども積極的に取り入れています。また乳癌における拡がりの診断においてはMRIがその力を発揮しています。画像を見ながら針を刺して細胞や組織を採取する方法も幅広く行っています。日本ではまだほとんど行われていないMRIで見ながら行う組織診への準備も現在進んでいるところです。




山内 英子先生

家族性乳癌に対する取り組み

乳癌全体の5−10%が遺伝性乳癌といわれていて、その原因となる遺伝子がある程度は同定できる時代になってきています。1994年BRCA遺伝子が見つけられてから、それに引き続いてもう一つの遺伝子も見つかり、欧米では既に盛んに検査が実施され、その陽性患者に対する予防戦略などの対策が進んでいます。当院も参加した日本における臨床試験の結果、日本人でもこの遺伝子の変異者が高いことが証明されています。保健診療の問題、予防的乳房切除の問題など日本でも早急に対策をとる必要性に迫られています。当院では早くから遺伝性乳癌に対する取り組みを始め、患者さんにできるだけの情報を提供し、十分にカウンセリングを行い、皆さんにそのような病態があることをいたずらに怖がらせるのではなく理解していただいた上に、希望者には検査を行い、その対策についてチームとして望んでいく取り組みを早くから行っています。医療従事者や患者さんへの遺伝性乳癌の理解とその啓蒙にも日々努力しています。




中野 絵里子先生

OncotypeDX(抗がん剤効果予測遺伝子検査)を
含む化学療法

Oncotype DXとは、乳癌の再発リスクを遺伝子レベルで解析し、予後予測・効果予測の両方を行おうとする検査の一つです。原発性乳癌の治療決定において、これまではホルモンレセプター・HER2タンパクの発現状況のほか、手術や生検組織の病理学的因子を指標に再発リスクの評価がされてきましたが、この大まかなリスク分類をあてはめるだけで最適な治療選択ができるわけではないことが分かってきました。
Oncotype DXは、ホルマリン固定されたパラフィン包埋組織を用いて、21個の遺伝子発現をRT-PCR法で測定します。この結果予測された再発リスクは再発スコアとして数値化され、低・中・高リスクに分類されます。Oncotype DXで高リスクと出た患者さんには術後化学療法を行うことで予後の改善が認められる一方で、低リスクと出た患者さんでは化学療法を行っても得られる利益が少ないことが分かってきました。つまり、Oncotype DXによる遺伝子検査を行うことにより、必要以上の化学療法を回避することや、化学療法を行う際の効果予測が可能となります。
Oncotype DXは数ある遺伝子検査の中の一つにすぎませんが、個々の患者さんに合った治療を提供するテーラーメイド医療の実現に向けて、癌治療の領域は遺伝子検査もさらなる進化を続けています。




松井 瑞子先生

乳房再建術全般

乳癌で乳房を失うことによる障害は、単に見た目というもの以外にも、精神的や体のバランス感覚面など様々な面で出てきます。現在では、乳房再建は乳癌治療の側面を支えており、患者が選択できる標準術式の一つと考えております。
院内では自家組織再建を主体として行っており、人工物(いわゆるシリコンバック)による再建は、岩平先生のクリニックでお願いしています。
自家組織再建は腹部から穿通枝皮弁を挙上するため、まだまだ時間がかかる手術であり、また術後の血栓形成などのリスクもあり手術室、麻酔科、病棟の看護師さん達のご協力あっての治療となっています。また、温存手術後の変形修正や進行癌の際の胸壁再建などでも、乳腺外科の先生方と協力をさせて頂いております。ここ数年で乳癌の手術方法はどんどん変化しており、私達もそれに十分に対応すべく、今後とも勉強と努力を惜しまずにいたいと思っております。




<図1>







〒104-8560 東京都中央区明石町9-1 聖路加国際病院 ブレストセンター
Tel.03-3541-5151(代) Fax.03-3544-0649(代)